弱さをふりかざすことについて

ツイッターである人(H氏)が「自分はアスペだ」と言ったところ、周りはザワザワと落ち着かなくなった。

共感する人、疑う人、嘘だと決めつける人など反応は様々。


H氏は"診断結果"を公表したことについて、同じ悩みの人と話したかった、アスペでもこんな風に仕事できてると希望を見せたかったと言ったが、想定と反対の声が来たそう。


死ね的な言葉が寄せられる状況に、H氏「辛い」→「本当に悩んでる人に失礼。謝って」→H氏「辛いって言っただけなのに」→以降H氏病みターン→『弱さを振りかざすな』



経緯の説明が長くなりましたが、この『弱さを振りかざす』ということについて、ちょっと考えてみた。


元々、振りかざすものって弱さではナイですよね。大体、権力とか大義名分とか正義とか正論とか刀とか…

振りかざされる側を脅かすようなパワーとか強みがあるものですよね。

ハンカチとか優しさを振りかざした所で、怖くも何ともないじゃないですか。


でも、弱さは振りかざすことができる。

言ってしまうと『相手を悪者にする力』が弱さにはあるから。


弱い者を助けるというのは「人として当たり前の事」と言う人もいますが、思うに日本人は「当たり前」とか「普通」に忠誠を誓う人が多い。

自分が「当たり前」「普通」の基準から外れそうになると、自分基準で「普通」を作り直して周りを見下してみたり、一匹狼気取ってみたりしますよね。


だから、「弱い人に優しくする」という当たり前の事ができない(状況・コスト・相手によって)場合に、自分が「優しくない人=悪者」になると思ってストレスを感じて次のようなアクションを起こすことがある。


・「ただの甘え」「うつでもないくせに」

→相手の弱さ自体を否定する。


・「私の方が辛い」「もっと大変な人もいる」

→弱さには弱さを。自分では対抗できない場合は、もっと弱い人(自分とは無関係でも可)の例を借りてくる。


・「だったら〇〇するな」「自分が望んだことだから我慢するべき」

→弱肉強食系の正論?でねじ伏せる。


こういう反応を返す人ほど、「人はこうあるべき」という考えが恐らく強いんじゃあないだろうか。


もちろん、相手のことを想ってわざとキツイ言葉を選んでぶつけることもあるし、「辛い」と言った直後に「今週末のディズニー楽しみ♪」と言っていたらホントかよとツッコミが入るのは当然である。


ただ、どんな生き方にせよ人が「辛い」と思う瞬間は確実にあり、そう思って表現すること自体はどんなに滅茶苦茶なタイミングや表現方法でも責められることは無いと思う。


しかし、人に「弱さ」を見せることは、その相手にプレッシャーを与えるため、「優しくない」反応を引き出す場合があると思って発言するべきだと思う。

だから、ツイッター上でアンチの多いH氏は、もっと「優しくしてもらえる」環境でその発言をした方が、本人にとっても周りにとっても良かっただろうな。炎上商法のつもりだったら、見当違いですが。


誰だってみんなに優しくなんてコスト的に難しいんですから、優しくするべき対象は少ない方がいいですよね。

そして、優しくするべき対象には、優しくする(自分のコストをかける)だけの価値があって欲しい。

言葉にすると打算的にもほどがある私の思考ですが、私の場合は「人はこうあるべき」という意識の薄いだらしない人間なので、


妊婦は病気じゃないし、親は勝手に自分を産んだんだし、うつは甘えだし、自分だって辛いし、もっと辛い人が他にいる。『弱さを振りかざすな』。

こんな言葉がスッと出てくるような思考回路してたら、そりゃあ自分も生き辛いし、「辛い」という人にも優しくする余裕なんて無くなっちゃうよね。


もう一つ別サイドからの問題は『弱さを振りかざす』側にもあって。

それは、弱さを権利化すること。

こうなると弱さ=権利だから、いくら振りかざしても違和感ない。


正確には「弱さを是正するための優しさ」の権利化ですね。

上で少し触れた、自分が「当たり前」「普通」の基準から外れた時にどういう態度を取るかということ。


健康な人が足を悪くした。

電車で中々席を譲ってもらえない。

座りたいのに座れないのは辛いですよね。

かといって一々知らない人に向かって「譲って貰えませんか」と尋ねるのは申し訳ないし…


こんな状況の時は権利化してしまうと楽です。自分は一切悪くないことにして、自分が「優しくされる」に値するかも考えずに、周りに権利の行使を要求すればいいだけですから。

もちろん「有難う」なんて発想はそこにありません。「弱いんだから優しくされて当たり前」。


そして権利つきの弱さに味を占めると、自ら弱さを主張するようになって、繰り返される優しさの消費にイラついた周囲が攻撃を始める。


私も図に乗って権利主張ばっかりにからないように気をつけなきゃなぁー。

『人に弱みを見せない』というのは気遣いのポイントにもなりうるし、人の弱さを見て攻撃したくなったら自分が鬱憤を溜め込んでないか内省すべきかな。


おわり。